大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)1538号 判決

被告人 佐瀬誠一

〔抄 録〕

原判決の挙示する証拠を綜合すれば被告人は佐瀬ちいを脅すつもりで原判示の如き言辞を弄したものであること明らかであり、また意識的に燐寸をもつて原判示障子紙に点火したものであることも明らかであるから被告人に脅迫及び器物毀棄の故意の存したことは固よりであり、更に脅迫罪は刑法第二百二十二条に列記した法益に対して危害が加えられるであろうということを不法に通告することによつて成立し、必ずしもそのため被通告者が畏怖の念を起したことを必要としないものと解すべきであるから、たとえ原判示佐瀬ちいにおいて現実には畏怖の念を起さなかつたとしても脅迫罪の成立になんら消長をおよぼすところはなく、また器物損壊罪における毀棄あるいは損壊とは物の本来の効用を失わさせる行為のみならず、物質的に器物の形体を変更又は減尽させる行為を指称するのであるから被告人の原判示の所為が器物損壊罪にあたることは勿論である。それゆえ原判決には所論の如き事実誤認の疑はなく論旨は理由がない。

(加納 山岸 鈴木重)

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